一穂ミチ『光のとこにいてね』感想・あらすじ・どんな人におすすめ?

書評

『スモールワールズ』に心を掴まれて、 また一穂ミチさんの世界に浸りたくて手に取った一冊。

本記事では、『光のとこにいてね』のあらすじ作品のテーマ、 そしてどんな人におすすめかについて紹介します。

あらすじ(ネタバレなし)

ある日、団地の公園で出会った、正反対の家庭で育つ二人の少女。それぞれが孤独を抱えながら、欠けた部分を補うように惹かれ合っていく。 自由に一緒にはなれない。それでも「想わずにはいられない」二人の人生を描いた物語。

作品のテーマ

  • 親からもらえなかった愛情と、
    その欠落が生む孤独
  • 対照的な家庭環境にありながら、
    同じ孤独を抱える二人
  • 孤独を埋め合うように惹かれ合う二人の関係

どんな人におすすめ?

こんな人におすすめ
  • 母親との関係に悩む方
  • 重たいテーマでも負担なく読みたい方
  • 性別を超えて人を想う物語に触れたい方

母親との関係に悩む方

主人公の二人は、それぞれが本来もらうべき愛情を母親から十分に受け取れずに育っています。

医者の妻として、子育てをタスクのようにこなす母親。

そして、弱く影響を受けやすく、子どもを振り回してしまう未熟な母親。

読み進めるうちに、「母親ならわかってくれるはず」という淡い期待が、 どんどん打ち砕かれていきました。

ここまで極端でなくとも、母親との関係に悩んだ経験がある方なら、自分の記憶と重なるような瞬間があるかもしれません。

母親との距離感に悩む人にとって、厳しくも確かな気づきをくれる一冊なのではないでしょうか。

重たいテーマでも負担なく読みたい方

物語は、幼少期・高校時代・成人期の3つの時代で構成され、それぞれがテンポよく切り替わっていきます。
さらに、結珠と果遠の視点が交互に移り変わることで、
物語に自然なリズムが生まれています。

重いテーマを含み、文章量も多めですが、視点や時代が軽やかに移り変わるため、
負担なく読み進められ、物語に引き込まれやすい構成です。

性別を超えて人を想う物語に触れたい方

前述の通り、本作品では、恋人とも友達とも明言されない、
ただ「想わずにはいられない」という関係が描かれています。

その曖昧さこそ、この作品の美しさであり、
「人を想う」という行為がどれほど静かで強いものなのかを、
思い知らされました。

どんな人には合わない?

こんな人は合わないかも

本作品には、暴力や性に関する描写が含まれています。 特に、女性や子どもが傷つく場面があります。こうした表現に敏感な方には、負担が大きいかもしれません。

心に残ったシーン

※ここからは物語の一部内容に触れています。未読の方はご注意ください。

果遠とお隣さんのチサさんがともに過ごす最後の夜が、印象に残っています。

お前は強くてやさしいから、弱い母ちゃんを捨てられない。捨てるのはいっつも弱いほうなんだ(194頁から引用)

これは、チサさんがこの場面で果遠にかけた言葉です。

果遠の母親への複雑な思い、 そして、これから先に母親が果遠を手放してしまう可能性まで見据えたうえでの、 最大限の優しさがこもった言葉だったのだと思います。

心に傷を負った女性と少女が、つらい現実の中で、互いの鼓動を確かめ合うように過ごした一夜。
その時間は、痛みとやさしさが同時に流れ込んでくるような、
つらくも美しいシーンでした。

絶対的だった親が、人に戻る瞬間

どんな母親でも、子どもにとっては世界の指標。

けれど、大人になって振り返ると、
その母親もまた、弱さや未熟さを抱えたひとりの人間だったのだと気が付きます。

結珠や果遠がそうだったように、幼い頃には絶対的だった親という存在が、
いつのまにか少しずつ一人の人間として見えてくる感覚は、多くの人がどこかで思い当たるものではないでしょうか。

ご自身の親との距離の変化と重ねながら味わってみるのも、ひとつの楽しみ方かもしれません。

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