お弁当が心をほどく。『弁当屋さんのおもてなし』シリーズの魅力

書評

北海道の四季と料理の温もりを味わえる『弁当屋さんのおもてなし』

お弁当が人の心をそっとほどいていく、このシリーズは全12巻の長編です。

「どれから読めばいいの?」

「本編と宅配編はどう違うの?」

そんな疑問を持つ方に向けて、この記事ではシリーズ構成と魅力をまとめて紹介します。

書籍情報

  • 著者:喜多みどり
  • 出版社:KADOKAWA(角川文庫レーベル)
  • 刊行開始:2017年5月25日(第1巻)~

どれから読む?

『弁当屋さんのおもてなし』シリーズは巻数表記が「①②③」ではなく、副題(サブタイトル)で季節や料理が表現されているので、「どれから読めばいい?」となる方もいるかと思います。
読む順番は以下の通りです。

副題
第1巻 ほかほかごはんと北海鮭かま
第2巻 海薫るホッケフライと思い出ソース
第3巻 ほっこり肉じゃがと母の味
第4巻 甘やかおせちと年越しの願い
第5巻 まかないちらしと春待ちの君
第6巻 夢に続くコロッケサンド
第7巻 しあわせ宅配篇
第8巻 しあわせ宅配篇2
第9巻 しあわせ宅配篇3
第10巻 しあわせ宅配篇4
第11巻 新米夫婦と羽ばたくお子様ランチ
第12巻 巡り逢う北の大地と爽やか子メロン

全12巻ですが、シリーズ構成はこうなっています。

  • 第1〜6巻:本編
  • 第7〜10巻:宅配編
  • 第11巻:番外編(本編と宅配編の橋渡し)
  • 第12巻:新婚旅行編(本編の続き)

あらすじ

本編

札幌の路地裏にある「くま弁」が舞台。 人生につまずいた千春が、心を癒すお弁当と店主ユウとの出会いを通じて、少しずつ前へ進んでいく。 弁当には、人の悩みや記憶をほどく優しさが込められ、客や千春自身の人生に彩りを添える。 四季折々の北海道らしい料理を通して、人と人とのつながりや再生が描かれる心温まる物語です。

宅配編

しあわせ宅配篇は、「くま弁」で働く雪緒が主人公。後輩を守れなかった罪悪感から仕事をやめ、「くま弁」でアルバイトを始める。 宅配アルバイトを通じて、人々の心に寄り添うおもてなしの本質に触れていく物語です。 お弁当がつなぐ人と人との絆、そして雪緒自身の再生が丁寧に描かれています。

『弁当屋さんのおもてなし』は、本編と宅配編で主人公が変わります。
時系列も本編から宅配編へと続いているため、読み進めるうちに自分も物語の時間の流れを体感できるような心地になります。

本編で「くま弁」の空気に包まれたあと、宅配編ではまた違う視点からおもてなしが描かれ、作品世界がさらに深まります。

北海道ならではのグルメ

旅行だけではなかなか出会えない、シリーズに登場する北海道のコアな食文化を紹介します。

甘納豆の赤飯

第1巻には、「甘納豆の赤飯」が登場します。

普通の小豆の赤飯とは異なり、甘納豆を使うため甘めの味であり、食紅でピンクに色づけられる「甘納豆の赤飯」。

北海道ではスーパーやコンビニでも見かけるそうで、道外ではまず出会えない赤飯。
いつか本場で味わってみたい一品です。

三平汁

第7巻には「石狩鍋」と並んで「三平汁」が登場します。

「三平汁」は、塩鮭・塩ニシン・塩ダラを用いた料理であり、魚本来の塩味を活かした素朴な汁物だそうです。

漁師の保存食文化から生まれ、200年以上続く北海道の冬の定番料理として今も愛されています。

旅行では家庭料理に触れる機会は少ないからこそ、こうした北海道の日常の味に憧れます。

テッカ(摘果)メロン

第12巻には「テッカメロン」が登場します。

テッカメロンは、北海道・富良野でメロン栽培の途中に間引かれた子メロン。

ほのかなメロンの香りとシャキッとした食感が特徴で、浅漬けや佃煮などで楽しむおかずメロンとして親しまれているそうです。

メロンがおかずになるとは、全く想像できませんが、ウリ科と考えれば冬瓜みたいなイメージなのかなと想像しています。

さいごに

北海道の美味しいものがぎゅっと詰まったこのシリーズは、本を開くだけで、遠くの土地へそっと連れていってくれます。

そして、いつか北海道を訪れたとき、「この味、物語で出てきたな」と静かに思い出せるのも嬉しいところ。

食べることが好きな人にも、日々の暮らしの中で少し立ち止まりたい人にも、やさしく寄り添ってくれる作品です

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