居場所がないHSPさんに読んでほしい『ゴリラ 裁判の日』 アイデンティティの悩みが軽くなる一冊

書評

『ゴリラ 裁判の日』は、ゴリラの視点で物語が進む、アイデンティティをテーマとした一冊です。

展開は早く、場面転換も多いため、文量はあるものの読み進めやすい構成です。

残酷な描写はほとんどなく、主人公ローズの優しさと温かさが物語全体をやわらかく包み込んでいます。

本記事では、『ゴリラ 裁判の日』のあらすじ、どんな人におすすめか、そして読んでみて感じた変化について、アラサーHSPの私が紹介します。

■『ゴリラ 裁判の日』あらすじ(ネタバレなし)

高い知能を持ち、言葉を操るメスのローランドゴリラ、ローズ。

人間の子どもを守るために夫ゴリラを射殺されたローズは、人間に対し裁判を起こす。人間社会の矛盾や思惑に揉まれながらも、ローズは夫のため、そして自分自身の存在のために戦う。

果たして、動物の命は人間の命よりも軽いのか。

■『ゴリラ 裁判の日』どんな人におすすめ?

アイデンティティ・クライシスを抱える人

  • 学校、職場に居場所がない
  • どこにいても浮いている気がする
  • 職場や家庭で求められる役割に違和感がある

こんな方に読んでみてほしい1冊です。

主人公はゴリラの中にいても、人間の中にいても疎外感を感じる、迷えるゴリラ。

どこにも属せない感覚を抱えながら、「自分は何者なのか」を探し続ける姿は、同じ揺らぎを抱える人に重なるはずです。

今の環境に生きにくさを感じる方

本作品の一番の特徴はやはり、ゴリラの目線で物語が進むところでしょう。

人間の思考を持たないまっさらなゴリラの視点から私たち人間社会を見ることで、私たちの生きにくさの原因が浮かび上がります。

環境の中にいると、苦しさの理由が見えにくいことがあります。しかし、一度その外側から眺めると、何が自分を苦しめていたのかが、意外と分かりやすくなる、そんな経験は誰にでもあると思います。

■読後に感じた変化

この本を読んで、HSPならではの視点で感じた変化と気づきをまとめました。

属性に縛られない生き方のススメ

居場所がないと感じる瞬間は、誰にでもあると思います。

特にHSPの方であれば、繊細さゆえに周囲との感覚の違いを強く意識し、そのギャップから疎外感を覚えることもあるかもしれません。

私自身、にぎやかな場にいると疲れてしまうのに、一人でいるとふと寂しさを感じることがあります。内向的にも社交的にもなり切れず、どちらの自分にも完全には馴染めない時間が続くと、自分の居場所がどこにもないように思えてしまうことがあります。

この本を読んで強く感じたのは、自分を簡単に一つの属性に当てはめる必要はないということでした。
むしろ、自分の軸は揺れながら育っていくもので、その揺らぎこそが自然な姿なのだと気づかされました。

「内向的」「社交的」「HSP」「母」「会社員」など、何か属性一つに自分を固定しようとするから、苦しくなるのかもしれませんね。

そしてローズがそうであったように、アイデンティティーは他者との関係があってこそ育つものです。

疎外感を感じて、自分の軸がわからなくなったときこそ、外に出て、世界と関わってみることで、思いがけない出口が見つかるのだと思います。

外側から見た人間の世界

この物語には、ローズを利用しようとする人たちの、複雑に入り組んだ思惑の残酷さが描かれています。その残酷さは、人間社会の複雑さそのものです。

作中には、こんな言葉があります。

ジャングルでは恐ろしいものは敵だ。だが、人間の世界では恐ろしいのは敵だけではない」

(本作品 179頁より抜粋)

まさに「身内に仇あり」という言葉が示すように、人間の世界では、外の敵よりも身近な存在のほうが注意を要する場面があります。なんとも、生きづらい現実です。

しかし、こうした生きづらさも、物語という安全な距離を通して見ることで、感情に飲まれずに俯瞰して捉えられるようになりました。

自分が感じていた生きづらさの原因を、冷静に見つめ直すきっかけをくれる一冊だと思います。

■まとめ ー ゴリラに自分を重ねる経験

読んでいて、主人公のローズと話してみたくてたまらなくなります。人間である私と向き合ったとき、ローズは何を思うのか、その答えを聞いてみたい。そして、できることなら友達になってほしいと思うほど、彼女はまっすぐで温かい存在です。

繊細な気質を持つ人ほど、ローズに自分を重ねてしまうのかもしれません。

居場所のなさや、周囲との感覚の違いに敏感だからこそ、彼女の孤独や優しさが胸に深く響く。
ゴリラと自分を重ねるなんて普通はありえないはずなのに、気づけばその感覚がとても自然になっていく。

読んでいるうちに、彼女がゴリラであることを忘れるほど、ローズが愛おしくなる物語です。

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