自分の人生を「不幸だ」と思ってしまう瞬間は、誰にでもあると思います。
過去の出来事や、生まれ育った環境。
どうしようもないものを抱えたまま、大人になってしまったような気がして、ふと立ち止まってしまうときもあります。
そんな 「自分の人生を悲観してしまうとき」 におすすめの一冊、 小川糸さんの『つるかめ助産院』を紹介します。
あらすじ(ネタバレなし)
主人公のまりあは、夫の失踪をきっかけに、思い出の南の島を再び訪れる。
そこで「つるかめ助産院」の院長・亀田鶴子と出会い、島で暮らすことに。
辛い過去を抱え、自分の人生を悲観していたまりあは、
助産院で働く人々との関わりの中で、少しずつ心をほどいていく。
こんな方におすすめ
自分の人生が不幸だと思う
自分のことを不幸だと思う瞬間って、誰にでもありますよね。
「人生なんてこんなもの」と諦めると、行動する気力もなくなり、不幸のループにはまってしまうことも。
主人公のまりあも、自分のことをかわいそうだと思っている節があります。
そんな彼女が、島の人々と関わる中で、少しずつ自分の人生の見方を変えていく姿は、
「抜け出す最初の一歩は、小さくていい」と教えてくれるようでした。

アニメ『文豪ストレイドッグス』第19話のセリフ
「人生を憐れむな。自分を憐れめば人生は終わりなき悪夢だよ」
このセリフにも通ずつところがあるなと思っています。
人との距離感に疲れる
人との距離感って、本当に難しいですよね。 近すぎると窮屈で、遠すぎると孤独を感じる。 しかも、そのちょうどよさは人によって違う。
この作品に登場する島の人々は、 近すぎず、遠すぎず、心地よい速度で距離が縮まっていくそんな関係性を持っています。
都会で暮らしていると、人との距離は極端に遠くなりがちで、孤独を感じやすいもの。
「こんな場所に住んでみたい」と思わせてくれる、温かい世界が広がっています。
出産に興味が持てない、または怖い
この作品では、妊娠や出産がきれいごと抜きで、リアルに、そして臨場感たっぷりに描かれます。
まるで目の前で命が誕生しているような読書体験で、ページをめくるたびに、つい呼吸が速くなるほど。
妊娠・出産には、予定外の悲劇が起こりえる。 そして、命の誕生は、神秘的で、どこか動物的な一面も含んでいる。 その両方を、この物語は静かに、誠実に描いています。
漠然と出産に恐怖心がある方や、興味が持てない方にこそ、 「出産って、こんなにも尊くて、こんなにも人間的なんだ」 と感じられる瞬間があるはずです。
読み終えたあと、出産や妊娠に対する印象が、少し変わっているかもしれません。
島ならではの食文化に触れる
食べ物そのものが主題の作品ではありませんが、物語の中で描かれる沖縄や奄美ならではの食文化が、とても魅力的なんです。
ジーマミー豆腐・水前寺草・かまい(イノシシ)・長命草・イザリ漁(タコ)
名前だけ聞くと馴染みがないはずなのに、どれも驚くほど美味しそうで、
ページをめくるたびに「島の食卓っていいな」と思わず感じてしまう。
本を読んで、新しい食文化を知る。
知らない世界に触れられるって、やっぱり楽しいですよね。
さいごに
島のゆるやかな時間や、人々のあたたかさに触れているうちに、 自分の中で固くなっていた部分が、少しだけ緩むような感覚がありました。
「自分の人生は不幸なのかもしれない」と思ってしまう心を、そっとほぐしてくれる物語です。
忙しい日々の中で、少しだけ遠くの世界に連れていってくれる一冊。
疲れた心に静かに寄り添ってくれるはずです。

