看板に書かれた「自己肯定力を上げるコーヒー」。
そんなユニークなメニューが出迎えてくれる喫茶ドードーは、おひとりさま専用カフェです。
『今宵も喫茶ドードーのキッチンで。』では、悩みを抱えた女性がちょっと変わったメニューとマスターの言葉に心をほどいていく物語です。
本記事では、同じく日々モヤモヤを抱えながら暮らすアラサー女性である私が、『今宵も喫茶ドードーのキッチンで。』に登場する女性たちの悩みや、どんな方におすすめしたいか、そしてこの本が持つ魅力を紹介します。
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■『今宵も喫茶ドードーのキッチンで。』あらすじ
「喫茶ドードー」は、都会の森の中にひっそりと佇むおひとり専用カフェ。夕方から灯りがともるこの店に、今宵も人生に迷える女性たちが訪れます。
ユニークなカフェメニューと、ユーモアを交えながら寄り添ってくれるマスターの言葉が、訪れた人の心を優しくほどいていく物語です。
■ 悩みを抱える登場人物たち
この本には、悩みを抱えた5人の女性が、ふとしたきっかけで喫茶ドードーにたどり着きます。
◎ていねいな暮らしに疲れる35歳の翻訳家
丁寧なくらしに縛られ、自分を追い詰めてしまう。
◎自分らしい名前で生きたい30歳の会社員(選択的夫婦別姓)
社会の壁にぶつかりながらも、自分の本心と向き合う。
◎更年期症状に悩みながらも独身で仕事中心に生きてきた50代のベテラン店長
同年代の友人たちの生き方と比べ、これからの自分の在り方に迷いが生まれている。
◎モヤモヤを抱えたまま日々をこなす28歳のスタイリスト
言葉にできない毒を、胸の奥にしまい込んでいる。
◎走り続けてきた70代のデザイナー
積み重ねてきた経験を抱えつつ、70代になった今、これからの生き方を考える。
■ こんな方におすすめ!
- SNSに疲れた
- モヤモヤが言語化できない
- 大人になっても悩みが尽きない
SNSに疲れた…
気分転換のつもりで眺めていたはずのSNSなのに、いつの間にか心が削られていくことはありませんか。
言い合いのような投稿が流れてきたり、広告なのか本音なのかわからないPRが混じっていたり、気づけばアルゴリズムに誘われるままショート動画を見続けてしまうこも。
辞めたいのについSNSを見続けてしまい、本を開くハードルがどんどん上がっていきます。
この本は、1篇あたりの話が短く、現代に生きる人が抱えやすい様々なリアルな悩みを扱っているため、本をハードルをぐっと下げてくれます。SNSに疲れる方、代わりにこの本を読むのはいかがでしょうか。
モヤモヤが言語化できない
登場人物たちは、それぞれ胸の奥に小さなモヤモヤを抱えながら、なぜこんな気持ちになるのか、どうすれば軽くなるのかもわからないまま、喫茶ドードーにたどり着きます。
- SNSのこころない投稿
- 職場での理不尽な要求
- パートナーの些細な言葉
こういった、小さなモヤモヤが日々積み重なっていくと、いつの間にか心に余裕がなくなっていきます。
マスターとの会話を通して、心の奥に沈んでいた感情が少しずつ分析が進む。言葉にならない気持ちを、物語が代わりに拾い上げてくれる一冊です。

踏み込みすぎず、突き放しすぎないマスターの距離感は、理想的な大人の姿そのもの。
大人になっても悩みが尽きない
この物語では、20代後半から70代まで、幅広い年代の女性たちの生活の悩みが描かれています。
これまで主人公が女性の物語を多く読んできましたが、ここまで年代の幅を広げて女性の悩みに光を当てた作品は、あまりなかったように思います。

大人になると、「この年でこんな悩みを持つ自分は未熟なのでは…」とふと悲観してしまう瞬間がありますよね。
年代が大きく離れた女性たちの悩みに触れることで、年齢を重ねても悩みは形を変えながら続いていくのだと気づかせてくれます。
■『今宵も喫茶ドードーのキッチンで。』の魅力
- つい気になるカフェメニュー
- 分断を生むテーマを、上手に扱う物語
- コロナ禍の記憶と向き合う
つい気になるユニークなメニュー
本の魅力のひとつが、ユニークでつい気になってしまうカフェメニューです。
喫茶ドードーの看板には、手書きで「自己肯定力を上げるコーヒー」「雨の日のサンドウィッチ」「自分をいたわる甘いもの」など、思わず立ち止まってしまうような今日のメニューが並びます。
読みながら、どんな味なんだろうと想像してしまい、読み終えたあとには自分でも少し作ってみたくなる魅力があります。
分断を生むテーマを、上手に扱う
穏やかなテーマに見えるこの物語ですが、この物語は選択的夫婦別姓や反ワクチンなど、社会で分断を生みやすいテーマにも触れています。
SNSでは、こうした話題が激しい批判の応酬になりがちで、物語の中でその類の言葉を目にしたとき、思わず身構えてしまいました。
けれど、この本はどちらか一方の立場を断定することはありません。
簡単に白黒つけるのではなく、それぞれの立場の人が相手の背景を思いやる。そんなちょっとしたことで分断の溝が少しずつ埋まっていくのではないかと、かすかな希望を感じさせてくれます。
コロナ禍の記憶と向き合う
物語の舞台は、コロナ禍の緊張が社会を包んでいた時期。
感染対策への意識の違いなど、普段なら起きない対立がいくつも生まれ、その中で人間の弱さを痛感する場面が少なくありませんでした。あの頃の感情が蘇り、私自身も読みながらかなりザワザワしました。
コロナ禍に強いトラウマを抱えている方には、つらく感じる場面があるかもしれません。
ただ、小説という安全な距離から振り返ることで、当時は気づけなかったことに気づける瞬間もあります。痛みを伴う記憶であっても、物語を通してなら、落ち着いて向き合えることがあるのだと感じました。
■ さいごに おひとりさま専用カフェ
最近では、喫茶ドードーのようなおひとり様専用カフェが少しずつ増えています。
心が疲れて一人になりたい、でも一人家にいると気持ちが沈んでしまいそうなときは、この本を連れておひとりさま専用カフェへ。
誰にも気を遣わずにページをめくる時間が、自分を回復させてくれるはずです。
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