『月がきれいな夜に、誰かに思い出してほしかった』 足りないままの自分に寄り添う1冊

書評

「ハードカバーは高いしな。」と手を伸ばせずにいた一冊。
でも、あの美しい表紙にどうしても惹かれて、つい手に取ってしまいました。

そして読み始めてみると、表紙の魅力に負けないほど、中身も心に残る物語でした。

買うかどうか迷っている方に向けて、ネタバレなしでご紹介します。

こういう方におすすめ

  • 婚活に向き合うのがしんどい
  • 仕事帰り、このまま家に帰りたくないなと思う
  • 最近感情が吐き出せていないと感じる

あらすじ(ネタバレなし)

喫茶店「雨宿り」で料理を担当する桃子。

毎週金曜日には「元カレごはん埋葬委員会」が開かれ、恋の痛みや人生のつまずきを抱えた大人たちがひそかに集う。

そんなある日、桃子は結婚を前提に交際していた恋人から突然別れを告げられる。亡き母が願った「家庭をつくる」という夢を胸に抱えたまま、深い喪失の中で立ち尽くす。

「雨宿り」に訪れる人々との交流を通して、彼女は「足りない自分」と向き合うための小さな一歩を踏み出していく。

読んでみて

本の世界に入れるごはん

この本の魅力のひとつがレシピ

物語の中に出てくる料理が実際に作れるようになっていて、読みながら「これ、美味しそう!」と思わずメモしたくなります。

物語の余韻に浸ったまま、その世界の味を自分のキッチンで再現できる。

ページを閉じても、しばらくその世界に浸っていられるのは、こういう仕掛けがあるからこそ。

大人の感情を吐き出す場

大人になると、悲しいことがあっても、悔しいことがあっても、

「こんなことで泣いちゃいけない」

そんなふうに自分を縛ってしまいがちだと思います。

本当は、誰だって感情を抱えて生きているのに、出す場所が見つからないまま、胸の奥にしまい込んでしまう。

気づけば、心が重くなっていたり、自分の感情がわからなくなったり。

だからこそ、誰もが安心して感情を吐き出せる場所があるといいですが、現実には、なかなかそういう場所って多くないですよね。

この本は、そのひとつになってくれる気がしました。

感情に年齢は関係ないし、悲しいものは悲しい。

読書って、ただ物語を追うだけじゃなくて、自分の心を整える時間でもあるんだと改めて感じました。

「足りない」自分との向き合い方

結婚して子どもを産んで、幸せな家庭をつくる。

そんな理想を思い描いていた主人公は、それが叶わない現実の中で、どこか自分を「足りない人間」だと感じています。

理想に近づこうと行動しても、思うようにいかない。
理想の形は人それぞれでも、そのもどかしさや焦りは多くの人が抱えるものだと思います。

人生、完璧だった人なんていない。

でも、いつでも全力で生きてきたからこそ、今の自分がある。

そして、足りないながらも、それでも生きていくしかない。

主人公が「足りない自分」とどう向き合うのか。
その姿は、同じ思いを抱える人にそっと響くはずです。

辛い帰り道に、本がくれる小さな居場所

仕事で疲れ切った帰り道、心がモヤモヤしたまま帰宅すると、その気分まで家に持ち込んでしまいそうになること、ありませんか。

そんなときのために、私は仕事バッグに居場所になる本を一冊入れています。そして、ふらりとカフェに寄り、本を開くようにしています。

本を読んでいる間自分から少し離れた世界に行けて、不思議と気持ちが軽くなることが多いんですよね。

「雨宿り」のような素敵な店はなかなか見つかりませんが、本の中には、いつでも迎えてくれる居場所があります。

辛いときには、本の中に居場所を見つけてみてください。

そのひとときが、あなたの心を守ってくれますように。

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