『太陽のパスタ、豆のスープ』感想ーどん底からのやさしい再出発を描く物語

小説

はじめに

突然何かを失ったとき、どうすれば前を向けるのか。
その答えをすぐに見つけられないけれど、
再出発のきっかけは意外と近くにあるかもしれない。

今日は、そんな“やさしい再出発”を描いた『太陽のパスタ、豆のスープ』をご紹介します。

ちなみに私、豆が少し苦手なんですが、
読後にはなぜか「豆スープ 簡単 レシピ」で検索してました。
今日の夜ごはんは、たぶん、はじめての“豆スープ”です。

★こんな方におすすめ★
・今人生のどん底にいて、何から始めればいいのかわからない方
・自分の過去について、誰かにそっと優しく肯定してほしい方
・刺激的な展開よりも、静かな物語に心を動かされたい方

書籍情報

  • タイトル:太陽のパスタ、豆のスープ
  • 著者:宮下奈都
  • 出版社:集英社文庫
  • 発売日:2013年1月18日
  • ページ数:288ページ

あらすじ

主人公・明日羽(あすわ)は、ある日突然、結婚直前に婚約を解消される。
心にぽっかりと穴が空いたような日々の中、自由で風変わりな叔母・ロッカさんの提案で「やりたいことリスト(ドリフターズ・リスト)」を作ることになった明日羽。少しずつ自分の内面と向き合いながら、日常の中にある小さな幸せや、自分らしい生き方を見つけていきます。

料理、会話、そして静かな時間。
何気ない日々の積み重ねが、彼女の心を少しずつあたためていく。

迷いながら生きること

人生には「どん底」と呼びたくなるような時期があります。

どん底に落ちるときは一瞬なのに
そこから立ち上がる道のりは、決して最短経路では進めない。
すぐに這い上がろうとしてもうまくいかず、
ああでもない、こうでもないと迷いながら、泣きながらも進んでいく。
この物語は、そんな“迷いながら生きること”を、やさしく肯定してくれます。

読み進めるうちに、明日羽の姿と過去の自分がどこか重なり、
「こんなふうに、自分もちゃんと乗り越えてこれたんだ」と感じました。

この本は、今どん底の真っただ中の人には、そっと差し出す光のような存在に。
かつてどん底にいたには、自分の歩みを肯定してくれるような、
そんな“人それぞれの心に寄り添う読書体験”を与えてくれます。

少し読んで、少し休む。

人生のどん底に落ちて、何をしてよいかわからないとき。
でも、何かしていないと、頭の中にマイナスなことばかりあふれてしまう。
そんなときって、ありますよね。

そういうときは、この本をそっと開いてみるのもいいかもしれません。

つらい記憶を考えないように、何かに熱中したい。
でも、キラキラと輝いて見える人たちを目にすると、
かえって自分の状態を卑下してしまうこともあると思います。

そんなとき、自分と似たような状況、
あるいは自分よりも少し苦しんでいる誰かの姿に触れることで、
ほんの少し、心が落ち着くこともあるのではないでしょうか。

「下を見て安心するなんて」と思われるかもしれません。
でも、本当に苦しいときは、まずは自分が安心できる方法を探すことが先
それがたとえ“一時しのぎ”だったとしても、
そうやって少しずつ時間をやり過ごしていくうちに、
いつか、時間が心を癒してくれるはずです。

読んだあと、少しお昼寝できれば、今日はそれで合格ではないでしょうか。

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