
たまたまですが、知り合いや家族から同じ時期におすすめされ、
「これは読むしかない!」と思い、手に取りました。
辻村深月さんの『傲慢と善良』。
この本の大きなテーマは婚活。アラサー女性である私にとって、まさにど真ん中の話題です。
★後味が悪い物語が苦手な方
★結婚・婚活に悩んでいる方
★心の機微をのぞきたい方
あらすじ『傲慢と善良』
婚活中の男女が、それぞれの価値観や過去を抱えながら「結婚」という選択に向き合っていく物語です。
ある失踪事件をきっかけに、登場人物たちの本音の奥に潜む「善良さ」と「傲慢さ」が少しずつ浮かび上がっていきます。
読み進めるほど、結婚とは何か、人を選ぶとはどういうことかを問いかけられる作品です。
選ぶ、選ばれるという構図
婚活は、相手を選び、同時に自分も選ばれる場ですよね。
「この人はなんか違う」「条件に合わない」と切り捨てることもあれば、
自分自身も誰かのふるいにかけられている。
その構図が、この物語ではとても鮮明に描かれています。
繊細な心理描写
登場人物の心の揺れが、とても丁寧に描かれています。
どの人物にも共感できる部分があり、どこか自分と重なるような人間らしさがある。
一見「善良な人」に見えても、その奥には複雑な感情が潜んでいる。
そのリアルさがあるからこそ、つい感情移入してしまいます。
読後の余韻
この物語は、とある失踪事件から始まります。
不穏な出来事から物語は動き出し、登場人物の弱さや汚い一面も次々と明らかになります。
それでも、読み終えたあとに嫌な気持ちはまったく残らず、むしろ、自分を受け入れて前に進もうと思えるような、そっと背中を押してもらえた感覚がありました。個人的に、後味の悪い物語は気持ちを引きずってしまうのですが、この作品はとても心地よい読書体験になりました。
重さの中に希望があり、最後にはすがすがしさすら感じられる結末です。
さいごに
結婚。
少し前までは、年齢を重ねれば自然と結婚する人が多かったように思います。
お見合いが主流だった時代に結婚したおばあさんが、「私たち恋愛結婚なんです」と照れながら話す姿を、テレビで目にしたことがあります。
今は、結婚が必須ではなくなり、さまざまな生き方が認められるようになりました。
その一方で、選択肢が増えたからこそ、迷いも増えたように感じます。
結婚したいのか、一人で生きたいのか。
正解はないからこそ、答えを出すのは簡単ではありません。
ただ、この本を読み終えた今、
自分の選択をどう受け止め、どう生きていくか。
その問いに向き合うための勇気を、与えられた気がします。
ちなみに、この本の登場人物が別の作品にも登場するらしく、読むのが今から楽しみです。
本を読み終えても、まだ楽しみが残っているのはうれしいものですね。
