お弁当で心をほどく物語。『弁当屋さんのおもてなし』シリーズの魅力

小説

私、食べることが大好きで、本屋さんに行くと、つい“ご飯系”の本ばかりを手に取ってしまいます。 『弁当屋さんのおもてなし』も、そんなきっかけで出会った1冊でした。

第1巻を読んだのはもう8年ほど前。あれから就職して、結婚して、趣味も生活も大きく変わりました。 それでもこのシリーズだけは読み続けていて、登場人物と一緒に時を重ねてきたような、そんな感覚があります。

本日は、そんな思い入れの深い『弁当屋さんのおもてなし』シリーズをご紹介したいと思います。

書籍情報

  • 著者:喜多みどり
  • 出版社:KADOKAWA(角川文庫レーベル)
  • 刊行開始:2017年5月25日(第1巻)~

どれから読む?

『弁当屋さんのおもてなし』シリーズは巻数表記が「①②③」ではなく、副題(サブタイトル)で季節や料理が表現されているので、「どれから読めばいい?」となる方もいるかと思います。
読む順番は以下の通りです。

副題
第1巻 ほかほかごはんと北海鮭かま
第2巻 海薫るホッケフライと思い出ソース
第3巻 ほっこり肉じゃがと母の味
第4巻 甘やかおせちと年越しの願い
第5巻 まかないちらしと春待ちの君
第6巻 夢に続くコロッケサンド
第7巻 しあわせ宅配篇
第8巻 しあわせ宅配篇2
第9巻 しあわせ宅配篇3
第10巻 しあわせ宅配篇4
第11巻 新米夫婦と羽ばたくお子様ランチ
第12巻 巡り逢う北の大地と爽やか子メロン

全12巻ですが、シリーズ構成はこうなっています。

  • 第1〜6巻:本編
  • 第7〜10巻:宅配編
  • 第11巻:番外編(本編と宅配編の橋渡し)
  • 第12巻:新婚旅行編(本編の続き)

あらすじ

本編

札幌の路地裏にある「くま弁」が舞台。 人生につまずいた千春が、心を癒すお弁当と店主ユウとの出会いを通じて、少しずつ前へ進んでいく。 弁当には、人の悩みや記憶をほどく優しさが込められ、客や千春自身の人生に彩りを添える。 四季折々の北海道らしい料理を通して、人と人とのつながりや再生が描かれる心温まる物語です。

宅配編

しあわせ宅配篇は、「くま弁」で働く雪緒が主人公。後輩を守れなった罪悪感から仕事をやめ、「くま弁」でアルバイトを始める。 宅配アルバイトを通じて、人々の心に寄り添う“おもてなし”の本質に触れていく物語です。 お弁当がつなぐ人と人との絆、そして雪緒自身の再生が丁寧に描かれています。

『弁当屋さんのおもてなし』は、本編と宅配編で主人公が変わります。
時系列も本編から宅配編へと続いているため、読み進めるうちに自分も物語の時間の流れを体感できるような心地になります。

本編で「くま弁」の空気に包まれたあと、宅配編ではまた違う視点からおもてなしが描かれ、作品世界がさらに深まります。

食べたくなる読書

心をほどく鮭かま

第1巻には、北海道の鮭かまが登場します。
私自身、鮭が大好きなのですが、なかでも特に“かま”が好きです。
骨のまわりの旨みが詰まった鮭さえあれば、白米が何杯でも進みそう。
確かに「かま」は食べにくい部分ですが、だからこそ“ながら食べ”ができず、
ごはんにじっくり向き合う時間をくれる。それも、魅力のひとつだと感じました。

春を告げるサクラマス

第5巻には、サクラマスがお弁当の一品として登場します。
読みながら「サクラマスって何だろう?」と気になって調べてみると、
サクラマスはサケ科の一種で、寒い海に生息しているそうです。
水揚げの時期が春であることから「春を告げる魚」とも呼ばれていて、
サケよりも脂が多く、旨味が強くて身が柔らかいのが特徴なんだとか。

鮭の“好き”を詰め込んだようなサクラマス、ぜひ味わってみたいと思うのですが…
まだ食べられていません。

物語を読んでいると、食べてみたい料理がどんどん増えていって、将来の楽しみがふくらむようで嬉しくなりますね。

食べること

ごはんを食べるということは、ただ栄養を摂るためだけの行為ではないと、私は思っています。
食べること”は、暮らしを少し楽しくしてくれたり、時にはそっと私たちを救ってくれるもの。

自分を大切にする」って、抽象的で、むずかしく感じることもありますよね。
でも、食べるものを少し丁寧に選ぶことは、私にもできる“自分を大切にする”方法な気がしています

この本に触れることで、「今日は何を食べようかな」と、ちょっとやさしい気持ちになれたら素敵だなと思います。

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