心がくたびれた日に開きたい『お母さんという女』

こころの本-エッセイ

仕事で叱られた日。道ばたで理不尽に怒鳴られた日。
知人から心ないひと言を投げかけられて、胸がざわついた日。

どんなに気をつけていても、そんな日はふいに訪れます。
そんなふうに心が荒れたとき、そっと寄り添ってくれる一冊――
益田ミリさんの『お母さんという女』の魅力をご紹介します。

書籍情報

タイトル: お母さんという女
著者: 益田ミリ
出版社: 光文社(知恵の森文庫)
発売日: 2004年12月8日
ページ数: 177ページ

あらすじ

『お母さんという女』は、益田ミリさんが“母”という存在を、少し距離を置いた視点から見つめ直したイラストエッセイです。
ちょっと不思議で、どこか愛おしい――そんな「お母さんあるある」が、ユーモアとあたたかさを交えて描かれています。

読んでいるうちに、自分の母親の姿がふと重なってきて、
「そうそう、うちもこんな感じだったな」と、懐かしさとやさしさが胸に広がります。
笑って、じんわりして、読み終えたあとには、少しだけお母さんに会いたくなる。
そんな一冊です。

この本の魅力

思い出すだけで、心があたたかくなる

益田ミリさんの『お母さんという女』には、
お母さんのやさしさと、それを見つめる益田さん自身のまなざし――
その両方が、面白く、やさしく、静かに描かれています。

私は「母」ではなく「娘」として、この本を読みました。
すると自然と、自分の母の姿が重なって、
久しぶりに実家に帰りたくなるような気持ちになりました。実家の猫にも…

本の中であっても、人のやさしさに触れると、荒んでいた気持ちも少し優しくなれる気がします。
実生活でやさしさに出会えない時は、この本に頼るのも一つの手。
お母さん、いつもありがとう(この場を借りてこっそり言っておきます)。

私も実家を出てもう数年。
母は「膝が痛い」とこぼしながらも、いつも私の身体を気づかってくれて、
帰省すると、手いっぱいの食べ物を持たせてくれます。
実家から戻った日の夕食は、だいたい“母の詰め合わせ定食”になります。

つらいことが重なって、自分の価値がわからなくなったとき――
この本を読みながら母の姿を思い出すと、
「私は、だれかにとって大切な存在なんだ」と、そっと思い出せるのです。

忙しい毎日にもなじむ、小さな癒し

『お母さんという女』は、活字と漫画部分のバランスが心地よく、
限られた時間でも少しずつ読み進められる一冊です。
また、一つひとつのエピソードが独立しているので、どこから読んでも楽しめるのも魅力です。
気になったページをふと開くだけでも、心がふっとやわらぐような読書時間になります。

仕事のあとのひと息や、通勤の移動時間など、
日々のすきまにそっと寄り添ってくれます。

さいごに

優しさにはいろんな形があるけれど、この本に出てくるのは、
おせっかいで、ちょっと不器用で、でもなんだか笑えて泣けるやつです。
…ちなみに、実家に帰ると、母のやさしさと一緒に、冷凍庫の奥から大量の保冷剤も出てきます。
使い道はよくわからないけれど、なんだか安心するんですよね。
この本も、そんな存在です。



タイトルとURLをコピーしました