『インド式 壁の乗りこえ方』を読んで気づいた、価値観の小さな変化

実用書

インドに行ったら人生が変わる。

様々なコンテンツで耳にするこの言葉。「本当に変わるの?」と半信半疑ながらも、心のどこかでずっと気になっています。

でも、日本の厳格な衛生環境で育った私の胃腸をインドに連れて行くことを考えると、いまは興味よりも恐怖が先に立ってしまいます。それでも、「インドに行くと、何がかわるんだろう」という思いが消えず、この本を手に取ってみました。

書籍情報

タイトル:『インド式 壁の乗りこえ方』

著者:栃久保 奈々

出版社:自由国民社

発売日:2020年7月23日

ページ数:240ページ

この本は、インドの多様な価値観やヨガ哲学を通して、「折れない心」で人生の壁を乗り越えるヒントを探る自己啓発書です!著者はインド政府公認のヨガインストラクターで、現地のNGO活動にも携わっていらっしゃいます。

読んでみて

インドだけじゃない、ヨガにも触れる一冊

表紙を見て「インドだ!」と早とちりしましたが、実際の内容は【インド5:ヨガ5】といった構成。
インドの風景や文化に加え、ヨガの精神的な側面にも深く触れられています。

私自身、過去2年間ほど某ホットヨガスタジオに通っていて、ある程度はヨガについて理解しているつもりでした。しかしこの本に書かれているヨガの哲学心の在り方については、新鮮なことも多くありました。

ホットヨガは、仕事終わりに疲れた体で向かうのがつらかったことと、「月○回通わなければいけない」という義務感に疲れてしまい、結局やめてしまったのですが、本書にある「ヨガは、自分が心身ともに良い方向に向かうためのもの」という言葉に救われました。一度やめたからこそ、本質的な意味でヨガと再び向き合えたのかもしれません。

インドの風景から考える、日本のいま

この本はインドの人々の暮らしを描いていますが、読み進めるうちに、日本でたびたび話題になる “オーバーツーリズム” のことが頭に浮かびました。

都会で暮らしていると、観光客のマナー違反にイライラする場面に何度も出会います。
「なんでそんなことを?」「ルールは守ってよ!」と怒りが込み上げ、心がざわついてしまうこともあります。

でも、まったく違う環境で育ち、異なる価値観のもとで生きている人たちにとって、日本人が“当たり前”と考えるルールや感覚が、必ずしも“当然”とは限らない。それは仕方のないことなのかもしれません。

この本にオーバーツーリズムについての記述はありません。
ただ、インドの異なる文化に触れる中で、「互いを理解しようとする姿勢」の大切さに静かに気づかされました。

もちろん、「郷に入れば郷に従え」が基本だと思います。
日本を訪れるなら、日本のルールを守ってほしいという気持ちは変わりません。でも、それと同じくらい、ルールを伝える側の工夫や努力も必要なのだと思います。

街中では、「ルールを守らない観光客と、ただにらむだけの日本人」という構図をよく目にします。
私自身、ルール違反に気が付いても、声をかけられていません。日本人として、どうすれば伝わるのか。どう行動するのが、より良いあり方なのか。

そんな問いを、インドの風景を通して考えました。

迷惑をかけるということ

本書には、インドにおける「迷惑」に対する考え方について言及された章があります。

私も、小さなころから「迷惑をかけちゃダメ」と、あらゆる場面で言われて育ちました。もちろん、人に迷惑をかけないようにする心遣いは大切ですし、それは「思いやり」にも通じる素敵な価値観だと思います。日本人として育ったこの考え方を、否定するつもりはありません。

ただ、「迷惑をかけてはいけない」という思いが強くなりすぎると、いざという時に助けを求められなくなってしまう。そして、他人から少しでも迷惑をかけられると、許すことが難しくなる。

それならいっそ、「私も誰かに迷惑をかけるかもしれない。だからこそ、誰かの迷惑も受け止める」という、もう少し柔らかな視点も持てたらいいのかもしれません。

長年染みついた価値観をすぐに書き換えることは難しいけれど、そんな考え方を、頭の片隅に置いておくだけでも、少しづつ変わってくるかもしれません。

さいごに

私自身、海外経験が豊富なわけではありませんが、本を通して異国の文化に触れることで、気軽に旅に出かけたようなわくわく感を味わうことがあります。

また、異文化との出会いによって、抱えていた小さな悩みがふっと軽くなる瞬間もあります。
多くの悩みは、自分の常識や認識の枠のなかで生まれるもの。
それらから解き放たれ、異なる文化のなかに思考をひととき預けることで、悩みが一時的に姿を消してくれるような感覚に包まれました。

この本のおかげで、実際にインドを訪れることは叶わなくても、ほんのひととき、旅をしているような気分を味わうことができました。

そして、またヨガを始めてみようかなと思いました。今度はもっと肩の力を抜いて、気軽に日常に取り込めそうな気がしています。

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