秋の夜長に読みたい、小川糸さんの世界

エッセイ

急に肌寒くなり、すっかり秋の気配が深まってきましたね。
私にとって秋は、やっぱり「読書の秋」。
肌寒さに誘われて急いで出した冬布団にくるまりながら、本を開く時間。
ふわりと包まれるぬくもりに、心までほぐれていくようです。

そんな秋の夜をより楽しめる、小川糸さんのエッセイをご紹介します。

秋の夜に読みたくなる、3つの魅力

1.季節折々の話題

小川糸さんのエッセイには、季節の食べ物や行事の話がよく登場します。
忙しい毎日の中では、季節を自分から感じにいこうとする余裕すらなくなってしまうこともありますよね。
でも、季節のものって、今年を逃すと次もあるとは限らない。
だからこそ、日々の中でふと季節の美味しい食べ物や伝統に触れられると、それだけで少し幸せな気持ちになれる気がします。

特におすすめ3選のひとつ『真夜中の栗』のような日記形式のエッセイでは、題ごとに日付が記されていて、読者も一緒に季節の移ろいを意識しながら読むことができます。

2.寝る前のススメ

私は寝る前によくエッセイを読みます。
もちろん、スマホをダラダラ見て過ごすこともありますが、日中にブルーライトで酷使した目をこれ以上使うのもな、と。

そんな夜、私が手に取るのは、展開をすでに知っているお気に入りの小説か、エッセイです。
寝る前は、心を揺さぶるような物語よりも、静かに寄り添ってくれる言葉が心地よく感じられます。

誰かの日常を少し覗かせてもらうようなエッセイは、心に波風を立てず、穏やかな気持ちで眠りにつく準備をさせてくれるのです。

3.丁寧な暮らし

小川糸さんのエッセイには、私が理想とする「丁寧な生活」が、やさしい日本語で綴られています。そして、その言葉や暮らしに触れると、しばらくの間、自分も穏やかに過ごせるような気がしてくるんです。

「丁寧」といっても、本当に些細なこと。冷蔵庫を静かに閉めるとか、姿勢を少し正すとか。
そんな小さな所作の積み重ねが、本来ありたい暮らしを思い出させてくれる時間になっている気がします。

本当は、ずっと心を整えて暮らしたい。
でも、忙しい日々の中ではなかなかそうもいきません。
粗雑な生活を繰り返していると、知らないうちに心の中に暗い感情が蓄積されていくような気がします。丁寧に暮らすということは、きっと、自分を大切にすることにも繋がっているのかもしれませんね。

私のおすすめエッセイ3選

小川糸さんのエッセイシリーズは、これまでに10冊以上
料理、旅、季節の移ろい、そして日々のささやかな感動が、静かな言葉で綴られています。
そのなかでも、秋の夜にそっと寄り添ってくれるような、お気に入りの作品をいくつかご紹介します。

『ペンギンと暮らす』(2010年発行)

この作品は、小川糸さんが“ペンギン”と呼ぶ夫との日常を中心に、料理や人とのふれあい、旅先での出来事などをユーモアと温かさを交えて描かれています。
他のエッセイ集と比べても、一話ごとのボリュームが控えめで、短く読みやすい構成になっているのが特徴です。
ちょっとした空き時間にも気軽に読めて、くすっと笑える話から、少し真面目な話まで、幅広く楽しめます。

『卵を買いに』(2018年発行)

実は、私が小川糸さんのエッセイと出会ったのは、この一冊でした。
「卵を買いに」という題を見たとき、どんな美味しい日常が描かれているのだろうと、わくわくした記憶があります。
なかでも、取材で訪れたラトビアでの話は、まるで自分もその地を旅しているような気持ちにさせてくれます。
今では、ラトビアが私の「訪れてみたい国リスト」に、しっかり仲間入りしています。

『真夜中の栗』(2022年発行)

この作品は、なんといっても四季折々の手料理が、どれも本当に美味しそうなこと。
苺のサラダにホワイトアスパラガス、ふりかけと、ページをめくるたびに自然と食欲がわいて、キッチンに立ちたくなります。
夜寝る前に、「明日は何を食べよう」と想像しながら、エッセイで一日を締めくくる。
そんな穏やかな気持ちになれる一冊です。

さいごに

エッセイを読んでいると、誰かの日記をそっとのぞかせてもらっているような気分になります。
そして、他人の日常に触れることで、一時、自分から離れることができるような感覚にもなったり。

忙しさに追われて疲れた頭を、やさしい言葉で包み込んでくれるような、そんな静かな休憩時間。
ほんの数ページでも、誰かの暮らしのリズムに触れることで、自分の時間も、少しだけ整っていく気がします。

秋の夜長に、そんなエッセイを楽しんでみてはいかがでしょうか。

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